『ハイ・ライフ』
『ハイ・ライフ』
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フランスの鬼才、クレール・ドゥニ監督の最新作をヒューマントラストシネマ渋谷にて、GWの序盤に鑑賞。
ドゥニの作品を観るのは久しぶりで、恐らく20年以上振りだろうか。
日本未公開の作品が多いので、映画館で観られるのはかなり貴重な機会。
この映画は、SFという建て付けで、地球から遠く離れてゆく宇宙船を舞台に繰り広げられる「ある実験」を通して、男女と親子の愛と、そして禁忌に直面せざるを得ない人間の心の逡巡を描いてゆく。
まるでフィルムで撮ったかのような色の質感(調べてみたところ、実際幾つかのシーンは16mmフィルムで撮っていたようだ)が心地良く、カメラワークも素晴らしかった。主人公の男性が娘を性的対象として見てしまうかもしれない自分を抑制する様を捉えたシーンがあるのだが、とても繊細かつ秀逸なカメラワークで鳥肌が立った。
多くのハリウッド映画はビジネス規模が大き過ぎるので、どうしても「答え」を(解釈に余地を残すとしても)提示し終わらせる事が多いが、この映画は「問い」を投げかけたまま終わっていく。村上龍が小説とは「問い」そのものであると常々言っているが、その意味においてこの作品も間違いなくそれらの一つであると言える。
ちょっと興味深かったのが、作中頻繁に出てくる精子の扱いだ。画面にがっつり精子が、それも度々出てくるのだが、あの映し方は女性ならではの感覚だと思う。男だとアレをあそこまで明確に画面に置いておこうとは思えない。
音のセンスも相変わらず鋭く、説明的描写を完全に廃しメタファーのみで気付かさせる脚本も隙がなく、完璧に調和のとれたいい意味での教科書のような映画だった。
傑作。
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