Opus ZERO

No Beginning No End.

『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』

『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』

 

moviola.jp



アップリンク吉祥寺にて。
この土曜日はAM10時から「のみ」の上映回しかないので、金曜夜から若干緊張しながらも、無事に鑑賞。

ユダヤアメリカ人のフレデリック・ワイズマン監督によるドキュメンタリーフィルムで、僕にとっては(恐らく多くの同年代人にとっても)マンガ『BANANA FISH』でお馴染みの、かの高名なニューヨーク公共図書館(NYPL)の表も裏も縦も横も存分に捉えた205分(つまり3時間25分!!)の傑作長編記録映画。

ナレーションやテロップは一切無く、劇伴音楽や効果音も全く存在せず、説明的な演出からは徹底的に距離を置いている。その代わりか、各シーンの編集はコンテクストを捉えられるよう前後に十分な尺を持ち(だから長くなるんだろうが)、いま映っているモノが何を描写しているのかが自然と理解出来るよう繊細な編集が施されており、カメラワークも一貫性のあるミドルショットに統一されていて、とても心地良かった。

日本人がこの映画を観てまず驚くのは、NYPLが提供し担う、そのサービスというか機能の多様さではないだろうか。
この場所では端的な「本」では無くそこに集う「人」が主役であるという明確な認識が共有されており、その「人」に対して、就職の斡旋やそのための職業訓練からインターネットサービス(wifi)の提供に移民向け教育など、近代都市の社会インフラに必要かつ不足しがちな「場所と機会」が惜しげも無く、しかも無料で提供されている。

図書館がこんなことまでやっているのか、と驚きの連続だった。
あえて東京で例えるなら、区役所と公民館と児童館とコンサートホールが凝縮されたような、そしてそれらが全て(ほぼ)無料で提供されている。
目から鱗が落ちまくる、心が洗われる、そして民主主義の根幹を成す一側面に触れられた、貴重な時間(くどいようだが3時間25分!)だった。

いくつかある印象的なシーンの中から、ある少女が初めて何かを借りようとした時の司書とのやり取りを挙げておきたい。
その少女は貸し出しに必要なカードを持っていないので、手続きから必要なのだが、まだ年齢が足りないせいか身分証明書的なものは持っていない。
となると普通「今度ご両親と一緒に来てね」となりそうなものだが、その時の司書のスタンスが素晴らしい。何とかこの場で借りさせてあげたいという思いがそうさせるのだろうが、学生証がなくとも成績表や時間割とかその他なんでも良いから在籍していると証明できる何かがあればいいのよ、と何とかその少女が借りられるよう次から次へとソリューションを提供していく。
子供に対しても個人としてのリスペクトを忘れない、アメリカの底力を垣間見れた良いシーンだったなと思う。

 


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